巣箱について


鳥の巣についての基本

 巣箱について述べる前に、まず一般的な鳥の巣について知っておいていただきたく思います。
 鳥にとっての「巣」とは、人間の持つ概念である家(home)とは大きく異なるものです。
 鳥は巣を作っても、ほとんどの場合、抱卵や育雛などの繁殖行為の時以外は巣には帰りません。また、多くの種で巣は1繁殖期にしか使われず、翌年はもう使用しません(樹洞繁殖性の種や猛禽類などを除く)。つまり、鳥にとっての「巣」とは、「卵や幼いヒナが移動できないために、一時的に設けている場所や空間」であるといえると思われます。そのため鳥は、卵や幼いヒナを持つ時以外は巣を持たないのです。つまり概念的には、鳥の巣とは人間でいうところのゆりかごや乳母車にあたると考えるといいと思います。

巣箱とは

 巣箱の事を詳しく言うと、巣箱とは、主に樹木にキツツキ類が開けて使用した後の巣穴や、枝などが折れて腐った後に幹などに出来た穴、それに岩の隙間にある穴などで繁殖する種類の野鳥に、人工的に巣穴(繁殖場所)を提供し、繁殖(子育て)の手助けをすることが目的で、人間が作って自然界に設置する人工の巣穴のことです。そのため、いかに身近にいる鳥でも、樹洞などのようないわゆる穴で子育てをする種類でなければ、巣箱は利用しません。つまりヒバリやツバメなどは巣箱には入らない種類なのです。
 このようないわゆる木のうろなどと呼ばれる樹洞は、ある程度木が大きかったり、またある程度樹齢があり木の枝の一部分が腐ったりしてできるため、いわゆるかなり大きな木でないと出来にくいと考えられます。また、最も繁殖に適した巣穴を掘るキツツキ類も近年個体数が減少しています。そのため大きな木もキツツキ類も少なくなり、近年樹洞繁殖性の鳥類が繁殖しにくくなっているものと考えられます。

 そのため巣箱とは、「近年繁殖しにくくなっていると考えられる樹洞繁殖性の鳥類に、人工的に巣穴を提供し、繁殖の手助けをするものである」と言う事ができます。


巣箱についての基本

1. 巣箱を利用する野鳥の種類は決まっている

 巣箱で繁殖する野鳥の種類は決まっています。巣箱を利用する種類の鳥は、すべて繁殖やねぐら(寝る場所)に穴を利用する種類です。繁殖に「巣穴」と言われる空間を利用する種類以外は巣箱には入りません。つまり樹上に皿形の巣を作るハト類や地上に皿形の巣を作るヒバリ、人家に皿形の巣を作るツバメなどは、巣箱には入らないのです(注:ツバメは「巣台」と呼ばれる台は利用する事があります)。
 つまり、巣箱をつくる場合には、巣箱をかけようとする場所に、こういった巣穴を利用して繁殖する種類の野鳥がいるかどうかを事前に調べておかないと、せっかく巣箱をかけても、もしその場所に巣箱を利用する種類の野鳥がいなかった場合、巣箱かけが無駄になってしまうという訳です。
 (注:以下、巣箱を利用して繁殖する種類の野鳥の事を 「樹洞繁殖性の鳥類」 と表現します。)

 【ポイント】
  ・すべての種類の野鳥が巣箱を利用する訳ではない。 (注:この事は意外によく誤解されています)
  ・できれば事前に、巣箱をかける場所にどういった種類の樹洞繁殖性の鳥類がいるかどうか把握しておくとよい。


2. 巣箱を利用する野鳥は、身近な種類では4種類程度である

 上記 1. のような事から、身近な種類で巣箱を利用する野鳥は、残念ながらせいぜい下記の 4 種類ぐらいしかいません。
 ・シジュウカラ
 ・ヤマガラ
 ・スズメ
 ・ムクドリ

 つまり、一般的には、身近な場所で巣箱をかける場合、これら4種類を想定して巣箱をかけるという事になります。これら4種類の中でも、身近な環境に巣箱をかけるとすると、シジュウカラが他のどの種類よりも利用する確率が高いと思います。極端な言い方をすると、通常一般的に巣箱をかけるとすると、シジュウカラのためにシジュウカラ用の巣箱をかけると考えても良いほどです。
 上記4種類の解説をすると、シジュウカラとヤマガラが庭先から山まで巣箱を利用し、スズメとムクドリは人家周辺のみです。スズメは意外に警戒心が強く、かなり安全な場所にかけないと巣箱に入らないようです。

 【ポイント】
  ・通常巣箱を利用する種類は 4 種類程度しかいない。中でもシジュウカラが利用する確率か高い。


3. 利用する種類によって、巣箱のサイズはほぼ決まっている

 巣箱を利用する種類の野鳥によって、巣箱のサイズは決まっています。種類によって好きなサイズがあり、もちろん大きすぎても小さすぎても巣箱を利用する確率は低くなります。そのためにも、事前に巣箱をかける場所に生息する樹洞繁殖性の野鳥の種類を把握しておくと良いのです。
 しかし、サイズが「ほぼ」決まっていると言っているのは、例えば人間の服と同じで、各種類必要とする巣穴の内部空間よりも広い場合は多少利用するからです。これには巣穴として巣箱を選択する鳥の個体差もあります。もちろん各種類が必要とする巣穴の内部空間よりも狭い場合には使用する事は少ないと思われます。
 つまり、その場所に生息する樹洞繁殖性の鳥類の種類の中から、自分が巣箱に入れたい種類を選んで巣箱を作る必要があるという訳です。
 しかし実際には、身近な場所では上記 2. の 4 種類程度しか該当しないという事は、前に述べたとおりです。

 【ポイント】
  ・その場所に生息する樹洞繁殖性の鳥類の種類の中から、自分が巣箱に入れたい種類を選んで巣箱を作る


 巣箱の作り方・かけ方については、下記を参照してください。

巣箱の作り方

巣箱のかけ方



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