巣箱の作り方
巣箱の設計図などについて
許可のうえ、人工構造物(電話柱)に架設されているブッポウソウの保護増殖用巣箱
ここでは、巣箱づくりに必要な巣箱の設計図等についてご紹介します。
作った巣箱のかけ方については、巣箱のかけ方を参照してください。
【巣箱の本】
これまでになかった巣箱の本
このホームページに書いたことにさらに詳しいことを加えて、本にまとめました。
よろしければ、ぜひご購入ください。
巣箱についてこれほど詳しく書いた本は、他にないと思います。
巣箱づくりよりもさらに重要と思われる、巣箱のかけ方などについても、非常に詳しく解説しました。
ほぼすべてが私のオリジナルで、従来からの本や資料などと重複する内容は、全体の1割以下くらい
ではないかと思います。
これまでの巣箱づくりや巣箱かけを総括し、検証し、そのうえで、新しく実態に合った考え方や方法
を提示しました。
★フクロウなど、いろいろな種類の鳥の巣箱についても紹介
フクロウ類やキビタキ、セキレイ類など、これまでほとんど紹介されたことがなかった種類の鳥の
巣箱についても、寸法入りで、かけ方も含めて紹介しました。
★ブッポウソウ用巣箱のつくり方やかけ方について詳述
ひとつで多くの種類の鳥たちが繁殖に利用可能な巣箱の「万能巣箱(これがブッポウソウ用巣箱です)」
についても詳しく紹介しました。
うまく巣箱をつくるための詳しいノウハウや、高耐久巣箱のつくり方などについても詳しく書きました。
多くの読者の方々から、「これまでになかった本」として、高い評価をいただいています。
多くの方がお求めやすいように、比較的低い価格設定にしました。
★著者としては、巣箱についてのあらゆるノウハウを詰め込んだつもりです。
価格を上回る内容の濃さだと思っています。
よろしければ、ぜひご購入ください。
タイトル 巣箱づくりから自然保護へ
著 者 飯田 知彦 (このホームページの作成者)
著者のホームページ 飯田知彦の自然研究室へようこそ!
出版社 創森社 (東京都新宿区)
単行本 : 276ページ A5版 20.8×14.8×2.4cm
ISBN-10 : 4883402584
ISBN-13 : 978-4883402588
価 格 1,890円(税込み)
出版年月日 2011年 4月21日
購入方法 お近くの書店や、インターネット(amazon等)等でご購入ください。
巣箱の作り方
巣箱の作り方のポイントは下記の2点のみです。この2点のみを守れば、あとは形が多少こっていても、なにかの木箱のリサイクルなどでも野鳥は利用します。
ただし、繁殖中の野鳥を事故から守るためにも、以下の2点を必ず守ってください。
1. ベニヤ板など合板では作らない。(繁殖期は梅雨時です。雨で巣箱が変形したり壊れる場合があります)
2. 南洋材や白木(モミ)板は使用しない。(腐りが早かったり、ぬれると完全に割れたりします)
おすすめは、スギまたはヒノキの板(1枚板)です。スギの間伐材の場合、巣箱に使う程度の板幅ならば、かなり安価です。カンナがけをしていなくてもかまいません。また、スギやヒノキの板は軽量なのも魅力的です。
【ポイント】
1. 巣穴の大きさ
2. 巣穴の下部分から巣箱の底までの高さ
特に 1. の巣穴の大きさが重要で大切です。もちろん共に多少大きめでも利用しますが、適正ではないために、もしもっと適当な場所があれば、野鳥はそちらを利用するようです。
また、特に巣穴が大きいと、外から外敵が入ってきやすいためか、よほど安全な場所でなければ、野鳥は利用しない傾向があるようです。
こうした巣箱の大きさ(寸法)は野鳥関係の多くの資料等にもありますが、実のところ、実際に使用された証拠といえる、研究誌等への正式な報告例がないものがほとんどです(つまり正式な報告がないために、この種類の鳥ならこの大きさで利用するだろうという予測に基づいた推定値であるとも言うことができます)。そのため私は現在、より野鳥が利用するために、野外で実際に使用された自然の巣穴の調査を行い、野鳥にとって適切な巣箱作成のためのデータを収集中です。(詳細は
http://www3.ocn.ne.jp/~kumataka/bupposonestbox.html の、ブッポウソウ用巣箱開発秘話を参照してください)データが集まり次第、いつか研究誌等に報告いたします。
下記は、こうした具体的なデータをもとに割り出した最新の巣箱のデータです。ぜひ参考にしてください。
巣箱の大きさ(各部の寸法) 単位:mm
種名(利用対象種) | 巣穴の大きさ | 巣穴の下部から底までの高さ | 巣箱の床の1辺の長さ(使用する板の幅) | かける高さ(m) |
シジュウカラ | 28〜30 | 110〜140 | 120 | 1.5〜2.5 |
ヤマガラ | 30〜40 | 110〜140 | 120 | 2.5程度 |
スズメ | 30〜40 | 100〜150 | 120〜150 | 3.0程度 |
ムクドリ | 40〜55 | 150〜200 | 150 | 3.0程度 |
ブッポウソウ(参考) | 80 | 210 | 210 | 5.0程度 |
巣箱に入る一般的な種類としては、以上のようなものでしょう(参考のブッポウソウを除く)。つまり、残念ながら身近な鳥では、まず上記の4種類しか巣箱を利用しないのです。この表を参考に作れば、これらの鳥はほとんどの場所に生息していますから、適切な配置で適切なかけ方をすれば、利用される確率は相当高いと考えてもいいでしょう。
ちなみに、通常市街地を含めて最も巣箱を利用する種類は、シジュウカラです。ですから、種類を問わずとりあえず作成してみる場合などには、シジュウカラ用を基本に作るのがいいと思います。
ごく身近にいるスズメは比較的警戒心が強く、かけた場所が相当安全でなければ、意外に利用しません。
例として、ブッポウソウ用巣箱の設計図をご紹介します。
この巣箱の構造は、少ない材料で強固にできる、片屋根式と呼ばれる巣箱のスタンダードな形のものです。上記表のように、巣箱を利用させたい種類によって巣箱の各部分の大きさが違うだけで、設計図はそのまま使用できます。表の数字を下記設計図に合わせ、寸法の割合から、おおよそその種類用の巣箱の大きさ(寸法)がわかりますので、それをご利用ください。
ブッポウソウ用巣箱の設計図は、以下のとおりです。
ブッポウソウ用巣箱の設計図。単位はmm。巣穴の直径は80mm。
【ポイント】
1. 板を切る時、「前」と「屋根」の板の境は、技術的に可能ならば、45度位に斜めに切る(そうすると、屋根と背の板部分がすき間なく付けられる)。
2. 底(床)になる板の四隅は、水抜き穴として切り落とす。巣材でつまる場合があるので、大きめに落とす。
巣箱についての解説
・底板の四隅を水抜き穴として切り落とす。比較的大きめに落とすこと。
・状況により、かけるための針金やヒモを通す穴を背板にあける。
・巣箱の掃除等を行う予定がある場合は、横板の下半分程度が上に開くタイプに作ったほうが使用しやすい。
・シジュカラ、ヤマガラ、スズメ用の場合、比較的小型で軽量のため、背の板は本体と同じ長さ(横の板の長い辺の長さ)でも良い。
【ポイント 2】 (耐久性巣箱の作成方法)
・板には、スギやヒノキを使用する(ラワン等南洋材、モミの白木は避ける)。
・板の厚みは10mm以上あること。
・釘はステンレス製の、可能ならばスクリュー釘を使用する。
・ちょうつがいもステンレス製のものを使用する。
長期間巣箱をかけていて破損する部分は、ほとんどの場合屋根です。ちょうつがいがサビて屋根が傾いたり破損したり、または風で飛んで屋根なし巣箱になったりしています。このような巣箱を作ったり放置しておくことは、社会に対し巣箱の作成全体が良いイメージを持たれなくなる原因ともなりかねません。
数年間巣箱をかけておく可能性がある場合は、必ず屋根のちょうつがいはステンレス製のものを使用し、同じくステンレス製のクギやネジでしっかり固定してください。
万能巣箱について
上記、本来ブッポウソウ用の巣箱を「万能巣箱」と呼ぶ理由
この巣箱の寸法は、実際にブッポウソウが繁殖に利用していた木製電柱の繁殖巣穴を8個調査し、その結果から割り出したものです。このようにして開発したブッポウソウ用巣箱ですが、ブッポウソウのために架設している時に、実にたくさんの他の鳥類も繁殖に利用する事がわかりました。しかもその多くはブッポウソウの利用時期とは重ならずに用しており、ブッポウソウとも共存して利用していることがわかりました。
そのため、シジュウカラなど小さな小鳥のために特別に巣箱をつくらなくても、このブッポウソウ用巣箱をつくってかけるだけで、多くの鳥類が保護できる事がわかりました。
この巣箱を利用した鳥類など
ヒガラ、シジュウカラ、ヤマガラ、ムクドリ、スズメ、ブッポウソウ、オオコノハズク、アオバズク、コノハズク、オシドリ、チョウゲンボウ、アオゲラ
の合計12種類(2006年現在)
(注) アオゲラは冬季のねぐらに利用、オシドリは80mmの穴でも利用しますが、それよりも若干広め(90〜100mm程度)のほうが好ましいようです。
動物 ムササビ、 モモンガ(巣箱で繁殖しました)
テン
なお、未確認ながらこの他にも数種類の野鳥がこの巣箱を利用していた形跡がありますので、確認でき次第、掲載していきます。また、地方によってはさらに多くの種類が利用する可能性があるものと思われますので、もし確認できた方は教えていただければ幸いです。
中型鳥類は、小型鳥類に比べ当然繁殖に必要とする空間が大きく、また入り口も大きくないと入れません。そのような大きな空間の樹洞などができる大きな木は近年減少してきており、中型鳥類の繁殖できる巣穴は年々少なくなってきているものと思われます。そのため、こうした中型鳥類のために巣穴を提供することは、鳥類全体の多様性や生態系の多様性を守るためにとても大切な事と思われます。むしろ、小型の鳥類のための巣箱を造るよりも、この万能巣箱のように中型鳥類のために巣箱をかける必要があると思われます。
小型の巣箱よりいくぶんか造りにくくかけにくいように思いますが、技術のある方は、はぜひこの万能巣箱のような中型鳥類用の巣箱を作って架設してみてください。
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E-mail : tiida@bronze.ocn.ne.jp
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